税務調査前の相続人との打ち合わせの必要性

相続人に税務調査が入ることになりました。税理士は事前に相続人と打ち合わせをしますが、そこで注意すべき点や、確認しておいた方がよい点とは・・・?

Reason
私どもの事務所に相続税の申告を依頼した人たちからすると、「何で専門家の会計事務所にお願いしたのに税務調査が入るのでしょう?」と疑問に思われるかもしれません。
このような自分たちに対する不信感を持たれないようにする、そこを我々税理士は一番注意しなければなりません。

統計的には申告した件数の約20%程度は税務調査がありますが、当事務所や相続専門でやっている会計事務は申告書の誤りが少ないので、せいぜい1%~2%くらいの税務調査の確率しかありません。

税務調査に入らないように我々も相当注意して申告書類を作っているのですが、税務調査の連絡が入った場合は、相続人と面談する前に何で税務調査が入ったのだろうか?自分たちの書類の作成に問題がなかったのか?それともお客様の行動に何か問題があったのか?或いは亡くなった人の取引の記録で自分たちが知り得ないことがあったのではないか?と考えます。
それで相続税申告書の資料や、亡くなった方の所得税確定申告をもう一度見直します。
それだけでも丸一日くらい時間がかかります。
すると、当初申告書を作った時では分からなかったことや、何かしら調査すべき要因がでてきます。調査官からすると、何か不明点や問題点があるから調査に入る訳です。

当事務所の申告書の場合には、税理士法の第33条の2の規定による書面添付制度を利用しています。
この書面添付制度を利用していると、税務調査開始前に一旦税理士と意見聴取という事前面談があります。
書面添付制度の意見聴取というのは税務調査ではありません。

税務調査に入る前に税務署にとっての疑問があったらそれを晴らすための場として設けられている訳です。
また、我々税理士が調査した中で書面添付に書いたことについて、税務署の方が疑念があれば質問をしてきます。
我々は税務調査官の立場になり、どのような所を見て税務調査をしたいのだろうという視点に基づいて書面添付を作っています。
土地の評価について減額した場合にはどのような事実に基づいて評価をしたのかを津々浦々と書くわけです。
預金については、「何年何月から何年何月までの通帳を見ました」と記載します。

ところが、紛失して今は無い通帳もありますので、金融機関に過去の顧客元帳を出してもらわないと分からないこともあります。
紛失した通帳は殆ど使っていない場合が多いので、再発行しなくても済むケースもあります。

税務調査に入られたり、意見聴取をされたりした過去の経験から言うと、我々がお客様と知り合う前にあったこと、例えば過去に大きい不動産の取引をしていたとか、海外送金をしていたとか、相続人でも知り得ない取引が過去にあった場合です。

お客様の過去の仕事や生活する中で行われた様々な取引を、税務署も過去の資料せんで収集し、被相続人の財産目録や情報源を確認し、「このような財産があるべきではないか」、「過去にこれだけの多額の給料をもらっているのだから、もう少し預金があるはずだ」などのような疑念をどう晴らすかなのです。

意見聴取は、税務調査官の持っている疑念を晴らすために面談するのですから、その予測が出来れば簡単に終了します。
意見聴取を受ける前に、我々の知り得ない相続人の知っていること、例えば高額の保険の満期金を受け取っていないか、解約をしていないか、不動産取引をしていませんか、という話をすると、実はこういう取引をやっていましたということが分かることがあります。
そのようなことから税務署に呼ばれた原因が分かります。

調査に入った理由がどうしてもわからなかったケースでは、亡くなった方の奥様が相続対策で億ションを2棟ほど買っていました。
夫の相続財産からは1億のお金ももらっていないはずなのに2億以上のお金が出ていれば当然税務署も不思議がったのだと思います。

相当なお金を専業主婦の奥様が持っていた、そこに一番の集中調査がされました。
当日、調査官が不動産を買っていますよねとチラッと言ったので、不動産を買った情報が税務署に流れて、調査に入ったことが分かりました。
そのような不可思議な行動をとると、やはり税務調査になる可能性があります。

相続人と面談を行う前に、調査に入った事由が分かればその資料を用意して頂きますが、我々の方で過去の通帳や様々なものを見て何か疑問に思うことがあっても、やはり電話ですと何かと感情の問題や言葉の行き違いでトラブルになりますので、お客様の所に出向いていきます。

お客様の所に行けばその場で確認書類を出していただけますので、余り事前に準備してもらうものはないと思います。