名義と贈与

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今でこそ子供の通帳を勝手に親が作ることはできませんが、昔は誰の通帳でも、架空名義であろうと、三文判さえあれば作れた時期がありました。

その当時というのは、大体親が将来の子供のために子供の預金口座を勝手に作り、お前に贈与したのだと言わんばかりにその口座に積み立てるケースは結構ありました。
しかしこれは実際に子供にお金を渡しているわけではなく、親の心の中で贈与した気持ちになっているという話です。

本当に子どもさんに(その当時は基礎控除が60万円でした)60万円ずつ贈与しても、言葉で言っていればまだマシな方です。
それも言わずに勝手にお父さんが子供のために毎年60万円積み立てていたという話がよくありました。

あげる側が「あげます」もらう側が「もらいます」と意思表示をすることで、贈与が成立します。つまり、預金口座であれば贈与された方(もらう方)が管理していて初めて贈与が成り立つわけです。
子が未成年の間は親が後見人ですので、親が子供の預金を管理していても問題ないとしても、お父さんが亡くなる頃には子供も成人し、娘だったら結婚して姓が変更したり息子だったら独立して結婚をしていなくてもどこか実家以外に住めば住所が変わったりするものです。
ところがお父さんが子供のためにということで子供の頃に作った通帳というのは、住所の移転もしていないのです。 何故なら通帳を全部お父さんが預かっているわけですから。

住所の変更もしなければ結婚した娘の姓も変わっていない、お父さんの印鑑をそのまま使用している・・・ それでは子供が預金を管理していることにはなりません。
  つまり、子どもが成人したら、親は通帳を子供に渡し、印鑑はお父さんのものから子供の印鑑に変える。
結婚で姓が変わったり住所が変わったりしたら、口座の名義、住所を変更する。
それによって、贈与が成立するということです。

以前に銀行に勤めていた方ですが、娘名義で作った積立通帳の印鑑は父親の印鑑をそのまま使用していました。
おそらく銀行の手前積立預金を獲得するように言われ、仕方なしに自分の子供の積立通帳を作り自分の口座から振り替えるようにしたのかもしれませんが、これでは子供に贈与したものではないと見なされてしまいます。
このような場合は贈与が成立していないため、義預金と判断されてしまいます。

名義預金つまり名義借りに時効はありません。
例えば自分がAさんの名前を借りて預金をしたからといっても、それはあくまでもAさんの名前を借りているだけであり中身は全部自分のものですから、10年経とうと100年経とうと預金の性格は変わらないのです。

贈与というのは、贈与行為という事実があって初めて時効の問題が出てきます。
贈与行為がなければ時効はないのです。
そのような判例も出ており、名義預金については時効がなく、亡くなった方の財産として課税することになっています。

税務署の言い分は、民法上の贈与行為です。
あげた方はあげるという意思表示をし、もらう方はもらうという意思表示をしていないと贈与したことになりません。
財産の管理権が受け取った方に移るということなので、親が勝手に子どもの預金通帳を作って積み立てたのは親の勝手な意思表示であり子供には伝わっていません。
ましてや財産管理権も渡していないので、贈与は成立していません。
そうなると時効の問題ではなくなってしまいます。

実際に、不動産の場合10年前に贈与契約書を作っていましたが、贈与登記は今年行いました。
登記せずに10年前に贈与したのだから時効か?ということではありません。
不動産の場合には登記されたときが贈与という話になります。

確かに年末に贈与し、法務局が休日ですから今年の1月4日に登記しましたということは当然あります。
その場合には法務局は空いていないので、年内中の贈与登記が出来ない訳ですから、登記した日に贈与したとは言われないかもしれません。
更に贈与税の申告もしていればトラブルがないでしょう。
しかし、登記をして初めて税務署も分かるわけですから、原則登記日が贈与とされる扱いになっています。