相続税の税務調査の受け方_不動産売買、保険契約の解約・満期

相続税の対策として不動産を購入するのは何故か?
親が子供に保険をかけていた場合、親が亡くなった後の保険金の行方は?
ここでは、相続税対策としての不動産の購入と、被相続人の保険契約について、相続税の観点からご説明いたします。

不動産売買、保険契約の解約・満期

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相続税は財産に応じて決まるため、被相続人の所有している土地の評価額が低いほど相続税も安くなるという仕組みになっています。
現在相続税対策として不動産の購入で最も効果的なのは、タワーマンションです。

一般のマンションでも、大体1億円の不動産を購入した場合、およそ40%の評価になります。
タワーマンションに関してはもっと低くおよそ30%以下の評価になります。
1億円で購入したタワーマンションなどは人気があるため、今すぐにでも1億同額程度で売れるだろうと思いたくなりますが、実際の評価となると、「3,000万以下、2,500万円~3,000万円の間」程度のため、そのような意味では買っただけで評価の減額になります。

更に、購入した不動産を他人に貸すと、建物の評価は3割減になりますし、土地についても賃借権の評価で18%~21%ほどの評価の減額の対象になるため、そのような意味で、建設会社がアパートの建築を一生懸命進めたりするのも、購入者が固定資産税や相続税対策で建てているケースが多いからだと思います。

不動産の売買と同様、保険についても保険の解約満期に100万円以上のお金をもらうと、必ず保険会社から税務署に資料が出ることになっています。

例えば亡くなった親が子供のために保険をかけており、保険料も親が支払っていた場合、当然相続人としては相続税を払うために親がかけた保険を解約したり満期で保険金をもらったりします。
子供本人ではとてもかけられないような3千万の保険に入っていた場合は、子供は3千万の保険金をもらっています。

従って、保険を解約することにより税務署に資料が出るので、子供の収入が殆どないため、そもそもその保険金の掛け金は親が出したものではないかという話になり、それが申告漏れだということが判明します。一種の名義保険という形です。

税務署に出る資料のこと

相続対策をすることでかなりの大きな資産が動きますので、「人が動いて何かを買う」と、必ず税務署の方に資料が出るようになっています。
そして、税務署としては出た資料を基に相続税の調査をします。

従って、過去の私が経験した税務調査は、99%が不動産の売買或いは保険金の満期解約、金の売買、または高額な役員退職金をもらった等、全て税務署に出た資料に基づいて税務調査が行われたケースです。

私ども税理士も、申告書を作るときに、被相続人が過去にどのような経歴を持ってどういった資産の売買をしたかということを調べあげ、一つ一つそのお金の行方を確認した上で相続税の申告書を作成すると、トラブルから回避されます。

また、税務申告については税理士法に基づいて添付できる「書面添付制度」というのがありますので、そこに昔売った財産についてはこのような形で預金に入っています、或いはこのような不動産に化けていますということを書くことによって、税務調査を回避することができます。

例えば、子供との共有物件である不動産を1億円で売った場合、子供が10%持っていたにも関わらず、100%が親の口座に入っているというケースもあります。
本来はその10%分は子供の財産ですから、逆に相続税が減額することになります。

このようなことを明らかに(気が付く)するためにも、やはり過去の不動産の売却関係や略歴を知るということは重要ですし、相続税の申告の後で税務署からクレームを付けられない申告書を作るためにもとても大切なことだと思います。

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例えば、不動産売却時のことや略歴の一部について、税務署は把握しているけれど、お客様自身が把握していないために税理士には話していなかったということがあります。

相続の仕事となると出来るだけお客様に対し、過去の略歴や調査の元になるような事項がなかったかどうかを聞き出すのが我々の仕事のため、お客様の方から一方的に話してくれることはまずありません。


以前あったことですが、亡くなったお父様がカナダに嫁いだ娘のために海外送金をしていましたが、そのことを家族には言っていませんでした。
100万円以上の海外送金をしてしまうと、銀行から税務署に全ての資料が出て、何月何日に誰それさんに海外送金をしたという具体的な資料のデータが税務署のコンピュータに入ってしまいます。
そして相続税の調査のときに、大金を送った理由などが当然税務調査の対象になります。

家族が知っていれば、口座のことや、あらかじめ相続人に聞いたことをお話できますが、それが通帳で見て分かる範囲の3年から5年以内のことでしたらよいのですが、それよりも昔のことですと、通帳を見ても記録は全く残っていません。
ましてや家族に黙って送金するという話になると、他の家族は当然知らないですし、知っているのは、「そういえばそういうこともあったわね」という相続人だけですから、相続人が自らそのような事実をお話しない限り、相続税の調査になり易いということになります。