相続税の税務調査の受け方_税務調査官の調査対象の見分け方

ここでは、税務調査官が調査対象にする事柄の見分け方(調査官の経験や勘で見分けるのか、それとも税務署のコンピュータだけを頼るのか?)と、貸家や貸店舗にも関係する特例の内容周知の重要性についてご説明いたします。

税務調査官の調査対象の見分け方

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税務調査官が調査対象とする事柄は、法人税の場合はKSKという国税統合管理システムが一定の件数をはじきます。
極端に収入が増えたり利益率が悪くなったり、財産がアンバランスになってしまうと、はじき出された要調査或いは全く調査を行っていない案件が、例えば100件にのぼってしまうとします。
その中で、調査を選定する統括官が、それらの案件を目で見ながら調査対象を選択します。
例えば「その中で50件調査しよう」、「どの会社に行こう?」というように。

時間は限られていますから、調査の件数も自ずと限られてきます。
但し、基本的には相続で一定以上の金額の場合は、ある程度はじき出されるかと思います。
あとは資産税の一部門という所で、例えば色々な特例の要件がきちんと該当するかどうかといった要件のチェックなどは意外と早めに審査するはずです。

例えばご自宅を相続した場合に、土地の評価額が8割引きになるという小規模宅地の減額の特例がありますが、減額の特例になるかどうかというのは非常に大きいわけです。 1億の土地が2千万円になるのかどうか?
1億のまま評価すると非常に大きな話になってくるので、要件にきちんと該当するかということは納税者にとってはメリットの多い所です。

従って、調査官によっては要件から少しでも外れたら、この場合8千万円の修正申告になりますので、税務署は膨大な納税を獲得できることに繋がります。
当然、調査官が一番気にするところであると言えます。

税理士としては、そういった要件に該当するかどうかについては慎重に検討しながら、やはり要件に満たすための書類の添付は怠らないようにします。

あるお客様が、こんなご相談に来られました。

人に貸していたテナントが、土地の再開発で再開発組合に買収されるとのことです。
申告権が翌年の3月17日で、立ち退き期限が3月末のため、非常に微妙です。

人に貸している貸家については50%割引になりますが、ただし申告期限まで入居者がそのままいてくれないと困ります。
何故なら、3月17日まで店舗が入居している状態で家賃を払い続けていないと、割引にならないからです。
従って、その方が3月17日以前に引っ越す具合が悪いということです。
要件が非常に厳しいということです。

普通であればそのような再開発や立ち退き時の問題はないのですが、この場合立ち退きの最中に相続税が発生しており、当然前月末(多分2月中くらい)に3月17日に立ち退くかどうかが分かるので、それを確認してからでないと申告書が完成できないという話です。
賃貸契約書で通帳に家賃が3月分まで入金があり、3月末に立ち退くというのが確認できないと、逆に申告書が完成しない話になってしまいます。

税務署はその辺の要件は非常にシビアに考えます。
1月に立ち退いて1月分の家賃しか申告しないと、「2月3月の家賃は入ってないのですね、ではこの特例は適用できません」というように、翌年のその方の確定申告を見ればすぐに分かってしまいます。

そのような特例は、要件から外れたら言い訳がきかないので、グレーゾーンというものがありません。
白か黒かはっきりしてしまうので、こういったケースの場合には、専門的な仕事を請け負う我々税理士も十分注意する必要があります。

一方、相続人の奥様がご自宅などを相続した場合はいつ売却してもいいのですが、相続人の奥様以外の親族や同居の親族辺りが相続した場合には、申告期限までその不動産を所有していなければいけません。

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先ほどの貸家や貸店舗なども、申告期限の10か月以内には保有していなければいけないという条件がありますので、その要件からはみ出ないようにしなければなりません。

そのようなケースの場合には、
「申告期限まで絶対に売らないでください。万が一それを売ったりすると、後で税金の追徴が来てしまいます。」
と予めこちらから言っておかないと、後でトラブルのもとになってしまいます。

そうすると、売りたい人は「では契約だけしていいですか?」といったことを言われる方も多いですので、それに対し税理士は、
「契約してもよいですが、但し不動産の入居者付きの賃貸のアパートや店舗などは申告期限の後に引き渡しにしてください。一日でも前だと駄目です。」
という様に申告してお渡しする必要があるという点を事前にお話ししておきます。

そのようにしておかないと、後で「先生が言ってくれなかったから売っちゃいました、どうしてくれるんですか!?」という話になってしましますので。

それは自分たちのリスクの回避ということもありますが、お客様にそのような特例の内容をきちんとご説明する説明義務がありますので、我々税理士もそのような点では注意を怠らないようにしております。